有識者へのヒアリング②(保育園経営者さん編)

前回保育士さんに伺った話をご紹介しました。今回は保育園を経営されている側の方に、公立保育園の意義や事業者視点での保育事業参入などについてお話しいただいた内容をご紹介します。

お話を伺った方は、杉並区で私立の保育園を経営している社会福祉法人の理事の方です。保育園運営に長く従事されています。


Q1.公立の保育園が民営化されていくことについて
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  • 公立保育園は杉並の保育の水準となっている。
  • 公立保育園と社会福祉法人設立の私立保育園が長年協力しあって、杉並区の保育の質を守ってきた
  • 区立も私立も大事。公立園と私立園の格差を、レベルの良い方に引き上げるようにしてきた。
  • 現在、保育課で私立と公立の格差是正を進めているが、レベルの低い方に合わせる是正となっていると感じている

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杉並区は次々と民営化を進めようとしていますが、公立の保育園を廃園にして今後どのように保育の質を確保していくつもりなのか疑問に思いました。そもそも保育の質について考えているのかどうか…_| ̄|○

 

Q2.200人規模の大規模保育園について

大規模保育園への不安を相談すると、杉並区に唯一存在する200人超の規模の保育園についてお話ししてくださいました。
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  • “公立保育園よりも上質な保育を”という方針で長年運営されている。
  • 運営者が保育園の前身として福祉施設を長年運営しており、歴史もノウハウも厚みがある。
  • 私立保育園の園長たちの間では“あそこは別格”という認識。

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これまで保育課に対して大規模保育園となることへの不安を訴えてきていますが、その度に
杉並区には大規模保育園の実績もありますから大丈夫です。」と言われます。

歴史もノウハウもある保育園を引き合いに出して何を言ってるのでしょうか…。他の事業者も同じように出来ると思っているのでしょうか…。ますます不安になるばかりです。

 

Q3.他の区の状況は?

お隣の世田谷区の状況と杉並区を比較しながらお話ししてくださいました。
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  • 世田谷区は長年同じ方が保育課に勤め、保育行政ノウハウが課に蓄積されているが、杉並区は人事異動が多く、昔をよく知る人が保育課に全くいない
  • 世田谷区は私立保育園運営事業者に営利企業を起用しない方針だが、杉並区は昨今はほとんど営利企業を起用している。来年開設の新設園は、公募してもどこも1社しか手を挙げず全て採用された異常な状況
  • 杉並区の事業者選定委員について、昨今は開示されておらず、事業者選定プロセスが不明。

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公募しても1社しか手を挙げず、全て採用ってなんだかもう出来レースのようにしか思えません。

 

最後に、事業者側から見た保育事業参入についてお話しいただきました。

Q4.保育事業参入って?

私立園は区や都から補助金が出るそうです。ただ、営利企業の園は利益を上げることが目的なので、人件費が圧縮される傾向があるとのこと…。
お話を伺った方の園では、8割以上を人件費、残りは雑費や修繕積立金としていてカツカツの状態とのことでした。営利企業の園の中には、人件費として補助金の5割程度しか割かない所もあるそうです。 

 

  • 儲からない。

保育事業は儲からないそうです。
ではなぜ営利企業が参入してくるのでしょうか?
とある営利企業の担当者は、「儲からなくていいんです。先行投資です。」と答えたとそうです。例え保育事業が赤字でも、他の事業にそのノウハウが活かされ、会社全体で利益につながるのなら参入するとの考えかららしいです。確かに保育以外にも事業を展開しているような企業だとそういった考えもあるのかもしれませんが…。その企業が人件費にどれだけ割いているのか気になるところです。

 

  • 公募準備はかなり大変!

区の公募要件を加味して保育園の設計書を作成するため、最低でも1か月は必要とのことでした。
お話を伺った方の園では、保育士さんも加わって、定員に対して各クラスの構成を考え、それに基づいて配置を検討し、さらに異年齢クラスにするか同年齢クラスにするか、0歳の部屋がここなら入口はこのへんか、、、などといった細かいことを一つ一つ検討し、建築士とも相談しながら設計書を作成していったそうです。

現場の意見を取り入れて設計書を作成しているところに、子供のことを1番に考えてるんだなという姿勢を強く感じました。
(9月以降、子供に関わる事なのに全く子供のことを考えずの話ばかり聞いていたので余計に…(涙))