有識者へのヒアリング①(保育士さん編)
要望書を出し終えた後は、平日の夜や休日を利用して有識者へのヒアリングを行っていきました。
何せ私達は保育に関しては素人なので、今回の民営化の件について実際に保育に携わっている方の意見を聞きたかったのです。
まず最初に、現役の保育士さんにお話を伺いましたので、内容をここで紹介します。
〈大規模保育園について〉
- 人数が多い環境になるほど、子どもは落ち着かなくなる。
- なるべく家庭に近い環境でゆったり過ごした方が子どもたちにとって良い。
- ゆっくり子どもたちに向き合う余裕がなくなり、ご飯を食べたくないとこどもが主張しても、時間が来たから無理やり口に押し込むといったことも十分起こり得る。
上記のような、日々子どもとどう向き合うかといった保育への姿勢は、業者選定の際の条件として明示されないので、言葉にならないところが保育の質として非常に大事ということを教えていただきました。
また、自分だったら200名規模の保育園で働きたいと思うか伺ったところ、
「保育士経験者なら新設の大規模園では働きたくないと思う。新卒者なら何も知らず就職するかもしれない。」
とのことでした。
ただでさえ保育士不足と言われている中、区は十分な数のベテラン保育士を確保できると思っているのでしょうか。区に説明を求めても、「事業者側で責任を持って保育士は確保します」との回答しか得られず、具体策が見えません。保育士さんが集まるのか、いまの上井草保育園の保育の質が維持されるかについての不安は解消されませんでした。
今回お話を伺った保育士さんは他区の大規模保育園の見学にも行かれており、そこでのお話も教えていただきました。
〈他区の保育園(160名規模)の状況〉
- 保育士がこどもの名前を覚えられず、70名規模の職員同士も認識できない状況のため、安全上の重大な問題がある。
- 保育園の後から隣に建った住宅からの苦情により、一番日当たりの良かった0歳部屋のカーテンが一日中開けられなくなってしまった。
- 近隣の子供の声へのクレームから9時半から17時以外は園庭で遊べない。
保育の質の確保、ノウハウを持った事業者や経験豊富な保育士による保育はもちろんのこと、保育園の周りの方々の理解も必須だと改めて感じます。
なお、区が移転先として予定している土地周辺の方々には11/29現在、保育園が建設されることについては説明会は行われていないようです。
署名提出
9月30日、いよいよ署名提出の日です。
担当の係長さんとのアポイントは13時半でしたが、私達は12時前に区役所に行きました。
なぜなら、、、可能であれば区議会各会派の議員さんを直接巡り、要望書を手渡したかったからです。
休み時間にも関わらず、多くの議員さんが私達の話を聞いてくださり、ご自分の意見も話してくださいました。
会派を問わず、下記2点の意見をお持ちの議員さんがいらっしゃいました。
- 杉並区の今回の民営化の進め方は水面下で行われているのか、話が見えてこない。手続き上、おかしい点がある。
- 公立保育園は杉並の保育の基準となるから残すべき。
今回の民営化の件は保護者だけではなく第三者から見てもやはりおかしいんだと感じました。
そして13時半。
係長さんとのアポイントでしたが、課長さんもきてくれました。
上井草保育園存続についての自分たちの思いを伝え、要望書と348名分の署名を課長さんに渡したのですが、、、署名をペラペラとめくって眺めたあと、
課長さん「お友達に書いてもらったんですか?」
私達「えっ...(言葉を一瞬失う)」
民営化方針決定の通達を受け、私達は何とかしたいと真剣に取り組んでいます。署名も一人一人に説明し、賛同してもらった人にお願いしたものです。
それなのに、「お友達に書いてもらったんですか?」は本当に残念でした。こちらの真剣な思いを区はこんな風に受け止めるのかと。(※)
「私達の考えに賛同してくれた人に署名してもらっています。」とはっきり伝え、区役所を後にしました。
つづく
※後日、議会で議員さんに署名についてどう考えているかを聞かれた課長さんは、「真摯に受け止めたい」と答弁されていました。今はその言葉通り受け止めていただいていると信じたいです。
イベント時系列
9月12日 民営化方針決定の通達
18日 初めてのクラス飲み
25日 他のクラスとの情報共有
26日 全クラスに署名用紙配布
29日 署名締め切り
30日 パブリックコメント締切日
署名提出
署名集め
署名を集める期間は大変短いものでしたが、一人一人に事情を説明し、私達の考えに賛同いただけた人に署名をお願いしていきました。
保育園からの帰りに署名のお願いにいったり、書いてもらった署名を後日受け取りに行ったりと、ただでさえ保育園から帰ってきたらバタバタで息をつく暇もない中、なんとか時間をつくり署名を集めました。中には会社内で今回の件を周知し、署名を集めてくれた方もいました。
そして署名を回収する29日夜、どれだけ集まっているか少しドキドキしながら父母会用ポストを開けたところ、、、
開けた途端にこぼれ落ちる程の量の署名用紙が入っていました!
集計したところ、348名分です!!
本当に短い期間の中、皆さんに沢山の署名を集めていただきました。
翌30日、区役所に署名を届けに行きました。
つづく
イベント時系列
9月12日 民営化方針決定の通達
18日 初めてのクラス飲み
25日 他のクラスとの情報共有
26日 全クラスに署名用紙配布
29日 署名締め切り
30日 パブリックコメント締切日
他のクラスとの情報共有
私達が集まった1週間後の9/25に、他のクラスでも民営化についての話し合いが予定されていると聞き、参加させてもらいました。
以下、話し合いで出た意見の一部抜粋です。
- 民営化があまりに唐突であり、困惑、不安がある
- どこを探しても区による周知が移転以外になく、このままの民営化は同意できない
- パブリックコメントで意見提出をする/した
- 区長への手紙をweb上などから送る/送った(返信はまだない)
- 保育課へtelで問い合わせたが、民営化は決定の体での回答がある程度用意されていそうな雰囲気だった
やはり多くの人が私達と同じように不安を抱えていました。
9/18に私達が話し合ったことも共有し、今何ができるかということを考えた結果、早速次の3点に取り掛かることにしました。
- 情報共有のためのLINEグループを作成し、参加希望の方を順次招待する。
- まだ情報を共有できていない他のクラスの保護者にも呼びかけ、上井草保育園存続に同意いただける場合は署名をお願いする。
- 民営化に関して思うことや、万が一民営化が避けられなかった場合の事業者への要望アンケートをとる。
1 は即日作成し、各クラスから多くの方に参加いただきました。
2 は各クラスの連絡網を利用し行いました。
3 は回答しやすいweb形式で後日実施としました。
区へは引き続きパブリックコメントや区長への手紙で意見を伝え続けようということでその日の話し合いは終わりました。
そして翌26日の月曜日、各クラスへ署名用紙を配布しました。29日までの短い期間での署名集めが始まりました!
つづく
イベント時系列
9月12日 民営化方針決定の通達
18日 初めてのクラス飲み
25日 他のクラスとの情報共有
26日 全クラスに署名用紙配布
29日 署名締め切り
30日 パブリックコメント締切日
クラスでの話し合い
通達翌日からクラスLINEでは民営化に関する話が飛び交いました。
「いきなり書面でつきつけられても…」
「何のための民営化なのかわからない…」
「何で民営化しようとしてるのか?知りたい」
相変わらず状況はよく分かりませんでしたが、区からの説明会の前に何か行動しないとということで、その週末(18日)の夜に集まりました。
クラス初めての飲み会!テーマは民営化!…重っ( ; ; )
皆で話し合ったところ様々な意見が出ました。以下、一部抜粋です。
- 事業者によっては、 先生の離職率が高く、担任が頻繁に変わるかも。
- 実績のない大規模施設※になるということや、新施設での予想外の事故のリスク。
- 朝の準備から1日の過ごし方、給食があるか、アレルギーへの対応、各種行事など、全く別な形態に変わる可能性がある。
民間の事業者による保育園で素晴らしい保育をしているところがあることは皆知っています。なので、民間の事業者を否定しているわけではありません。
でも、突然の通達&説明会は事業者決定後の予定、というあまりにも一方的なスケジュールからは、
子供たちのことを考えているわけではなく、費用負担軽減のために紙ベースで計画を進めているんだな
という印象を持たざるを得ませんでした。
そこで、私たちは、
今回の区による一方的な民営化の方針決定、あまりにも強引なスケジュールは、そのまま受け入れるべきではなく、区に対して、上井草保育園の存続を求めていく
こととし、皆の意見を区に伝えるために署名を集めることとしました。期限はパブリックコメント締切日の9月30日まで!!
まずは他のクラスの保護者にも私たちの考えを伝えるところからです!
つづく
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※区からの通達には書いていませんでしたが、調べたところ移設後の定員は200名(現在100名程度)になることが分かりました。200名という数は実績もなく、保育関係者へのヒアリングでも多すぎるとのことでした。
イベント時系列
9月12日 民営化方針決定の通達
9月18日 初めてのクラス飲み
9月30日 パブリックコメント締切日
民営化方針決定の通達(ペラ紙一枚)
2016年9月12日、保護者の元に1枚のお知らせが届きました。
<お知らせ内容抜粋>
日頃から保育行政にご理解ご協力いただきありがとうございます。
さて、杉並区では、区立施設の老朽化に伴い、時代とともに変化する区民ニーズに的確に応えるため、計画的に施設の再編整備を推進しています。
上井草保育園は築46年が経過し、建物の更新時期を迎えつつあるため、区が取得した用地に平成30年度頃移転改築を図る旨は、これまでお知らせしてきたところです。
この間、区では移転後の運営形態について検討してまいりましたが、今般、平成30年4月から民営化を図ることを方針決定し、現在区民などの意見提出手続き(パブリックコメント)で広く意見をいただいているところです。
本件における保護者説明会につきましては、計画が確定次第、園と相談し、しかるべき時期(11月頃)に開催いたします。日程につきましては、改めてご案内させていただきます。
突然のお知らせとなり大変恐縮ではございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
簡単に言うと、
①老朽化に伴い移転&改築予定であること
②移転に伴い、運営を民間の事業者に任せる(民営化)方針を決定したこと
③②に関する意見をパブリックコメントで受け付けていること
④事業者決定後に保護者への説明会を予定していること
です。
何せペラ紙1枚(しかも表面のみ)の通達なので、詳細も全く分かりません。
「民営化ってあるけど、具体的に何がどう変わるの?そもそもパブリックコメントってなに?」状態です。しかもこのお知らせ、右上に記載されている日付が配布日ではなく、9月吉日と記載されてました。…吉日ってなんじゃー!!(怒)
悶々としながら迎えた翌日、1人のお母さんがクラスLINEに送ってくれたメッセージが、保護者達が民営化について一緒に考えるようになった最初のきっかけとなりました。
「民営化の件、どう思いましたか?」
つづく
上井草保育園の存続を求める会について
私たちは、杉並区立上井草保育園の在園児の保護者(有志)による会です。
突然の民営化方針決定に戸惑いながらも、民営化になるとはどういうことかを私たちなりに調べた結果、
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区立保育園の民営化(廃園)は、区全体の保育の質を下げるだけではなく待機児童を減らすという目的に逆行している
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という考えに至り、上井草保育園を含む区立保育園の存続を求めて活動しています。
このブログでは、民営化方針決定の通達を受けてからの出来事や、私たちが調べたことについて書いていきたいと思います。